奥飛騨の先人たちが残した森の守り神「平湯大ネズコ」 Posted on 2022年3月23日2022年3月23日 日本の国土の2/3は森林が占めており、岐阜県土の約8割が豊かな森林です。全国的に見ても、岐阜県の森林率は全国第2位となっています。そんな岐阜県には多くの巨木がありますが、今回は奥飛騨にある巨木のご紹介です。 奥飛騨温泉地の歴史ある御神木 平湯大ネズコ 岐阜県高山市東部に位置する奥飛騨温泉郷は、平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉、新穂高温泉の5つの温泉地の名称です。今回ご紹介する「平湯大ネズコ」は中部山岳国立公園に指定されている平湯温泉にある巨木です。 乗鞍岳のふもと、海抜1,250mにある平湯温泉は、奥飛騨温泉郷の中で最も古く、歴史ある温泉とされています。近くには飛騨高山、乗鞍岳、上高地などの有名観光地が数多くあり、温泉内には大規模なバスターミナルがあるので、各観光地を結ぶ交通の要所として賑わっています。 そんな平湯温泉は、現在では近代的な旅館が立ち並ぶ温泉街ですが、道路が整備される前は、雪に閉ざされる冬の間、男たちは出稼ぎか炭焼きで生計を立てる貧しい生活を送っていました。 戦中、戦後と炭の需要が高まった頃、貧しい者は営林署の山の木を安く払い下げてもらい炭を焼き、生活の糧としていました。その中に「大ネズコ」が立っており、そのあまりの大きさと立派さに、当時の人たちは、いずれ平湯の宝になるかもしれないから伐(き)らずに残しておくことにしたと伝えられています。 この木は、社会教育者「篠原無然」から自然の大切さを教えられた村人が、将来きっと地元の貴重な財産になると思い「平湯大ネズコ」と名づけ、残した巨木です。 平湯大ネズコ 篠原無然(しのはらぶぜん)……大正時代に自ら平湯に赴任してきて、青少年の育成や女工救済活動など、平湯の発展と教育に尽力した。 先人から受け継がれる平湯の宝 平湯大ネズコ 平湯大ネズコは、樹齢約1000年(推定)、高さ23m、幹周760cm、所在地標高1,420mにもなるクロベの木です。 ネズコは別名クロベとよばれ、日本特産のヒノキ科の常緑高木です。本州中部から四国に分布し、特に中部地方の山岳地帯と日本海側に多く、山地に自生します。 ネズコはヒノキ、サワラ、アスナロ、コウヤマキと並び、「木曽五木」のひとつに数えられ、建築材や船舶、家具などの有用材として利用されます。葉はヒノキやサワラによく似ていますが、より分厚くて裏側が黒っぽく、気孔帯と呼ばれる酸素や水蒸気などを交換する孔はそれほど目立ちません。 平湯大ネズコ周辺は、下層に笹が繁茂し、ブナ、カンバ等の広葉樹の小径木が多く自生しています。昔、炭の材料として伐採したため、点状にネズコ、トウヒ、モミ等の針葉樹の大木が残りそれ以外は、広葉樹の小径木が中心となっています。 平湯大ネズコは、”森の巨人たち百選”にも選ばれている名木で、近くには日本の滝百選にも選ばれた平湯大滝もあり、多くの観光客が訪れます。幹の根本にはウッドデッキが設置され、間近で迫力ある巨木を見ることができます。 平湯大ネズコへのアクセスは、平湯キャンプ場または平湯温泉スキー場第2駐車場から遊歩道を徒歩30分程度です。冬季は閉鎖されており、例年GW明け頃からアクセス可能となります。 先人より受け継がれてきたこの平湯大ネズコは、現在では平湯温泉地内の守り神のような存在となっています。古くから多くの人に愛された平湯温泉地内の歴史ある巨木を、ぜひ一度訪れてみてください。 木曽五木……江戸時代に尾張藩により伐採が禁止された木曽谷の木。ヒノキ、アスナロ(アスヒ)、コウヤマキ、ネズコ(クロベ)、サワラの5種類の常緑針葉樹林。森の巨人たち百選……林野庁が2000年に次世代への財産として健全な形で残していくべき巨樹・巨木を中心とした森林生態系に着目し、代表的な巨樹・巨木を「森の巨人たち百選」として選定した。 【参考・文献・画像提供】平湯温泉観光案内所 お問合せ 平湯温泉観光案内所平湯巨樹・巨木保全協議会〒506-1433岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯763-191TEL:0578-89-3030FAX:0578-89-3130URL:http://hirayuonsen.or.jp/