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北アルプスの蝶

クジャクチョウ  画像提供:飛騨乗鞍観光協会

 みなさんは、高山蝶という言葉を聞いたことがありますか?
 高山蝶とは、森林限界より上部の高山帯で見られるチョウで、本州中部以北の高山およびその近傍の渓谷、高原などに限って分布する一群の蝶類です。厳しい環境に対応するために特殊な進化をとげたものも多く、平地の蝶とは違った特徴を持つ貴重な蝶たちです。中には絶滅危惧種に指定されているものも。

 北アルプスでは、平地に生息する蝶ももちろん見られますが、中には北アルプスでしか見られない珍しい高山蝶も見られるんです!

 今回は、乗鞍を含む北アルプスで見られる蝶、高山蝶を紹介します。

【クジャクチョウ】

 イラクサ科植物の生える山地の草原に生息。成虫は花の多い草原や樹林縁の開けた草地などでよく見られます。高山蝶ではありませんが、乗鞍では畳平のお花畑辺りでの生息を確認されています。

 明るい茶色と大きな目玉模様がクジャクの羽のようにみえることから名づけられました。

画像提供:岐阜聖徳学園大学

【タカネキマダラセセリ】
環境省:準絶滅危惧種指定  岐阜県:絶滅危惧II類指定

 亜高山帯の樹林周辺の高茎草原や草付き、崩壊地や急峻な崖、川幅の広い渓流沿いや低木が生い茂る小さな沢の周辺に生息します。岐阜県では北アルプスの麓、奥飛騨温泉郷で確認されたことがあります。

 翅を広げた大きさ30mm前後の蝶です。翅の色は茶褐色で黄褐色の斑紋があり、裏面には黄褐色の斑紋が見られます。

画像提供:岐阜聖徳学園大学

【ミヤマモンキチョウ】
環境省:準絶滅危惧種指定  岐阜県:絶滅危惧II類指定

 本州中部の森林限界以上の高山帯にのみ生息し、尾根付近のハイマツ帯や山腹の食樹のある草地に見られます。岐阜県でも北アルプスの高山帯に限定してみられます。

 翅を広げた大きさは40mm前後の蝶です。翅の色は雄は黄色、雌は白色で共に翅の外側に黒い帯状の紋があります。近縁種のモンキチョウにはこの黒帯に黄紋があり識別できます。

画像提供:岐阜聖徳学園大学

【クモマツマキチョウ】
環境省:準絶滅危惧種指定  岐阜県:準絶滅危惧種指定

 亜高山帯の日当たりの良い渓流、転礫の多い川原、源頭などやや開けた環境に生息します。低標高地では耕作地や人家が点在する道路などで発生することがあります。岐阜県では乗鞍岳以北の高山帯で確認されています。

 翅を広げた大きさ40mm前後の蝶です。翅の色は黄白色で雄の前翅端は橙色、雌にはこの橙食色部がありません。雄雌とも翅裏面には灰緑色のモザイク模様があります。

画像提供:岐阜聖徳学園大学

【オオイチモンジ】
環境省:絶滅危惧II類種指定  岐阜県:準絶滅危惧種指定

 本州では、標高1000m〜1600mの山地帯〜亜高山帯下部の渓流沿いに生息します。国内でこの蝶が見られる西限が、北アルプス南端の乗鞍周辺といわれています。

 翅を広げた大きさ70mm前後の蝶で、翅の地色は黒褐色で青色の光沢をもち白い斑紋を持ちます。後翅の外縁には橙褐色の斑紋列があります。雌は雄より大型で白紋も大きいです。

画像提供:岐阜聖徳学園大学

【コヒオドシ】
岐阜県:準絶滅危惧種指定

 標高1200m付近の亜高山帯下部にあたる針葉・広葉混交林の林縁や渓流沿いに生息します。岐阜県では飛騨北東部などで確認されています。北アルプスの上部で見られるものは発生地から離れて飛来したものです。

 翅を広げた大きさ45mm前後の蝶です。翅表は赤色と黒色の斑紋、裏面は黒色の地色で褐色と縞模様を作り、種の同定に困る類似種はいません。

画像提供:岐阜聖徳学園大学

【ベニヒカゲ】
環境省:準絶滅危惧種指定  岐阜県:準絶滅危惧種指定

 北アルプス、白山山系の標高1500m〜2200mのガレ場、草原、池塘などに生息します。

 翅を広げた大きさ約37〜43mmの蝶です。翅表は黒色の地色で、外縁沿いに橙色の紋がありその中に黒点が並びます。雌の後翅裏面には白色帯と黄色帯の2つのタイプがあります。

画像提供:岐阜聖徳学園大学

【クモマベニヒカゲ】
環境省:準絶滅危惧種指定  岐阜県:準絶滅危惧種指定

 高山帯下部の森林限界付近に多く、ダケカンバやミヤマハンノキなどの疎林に囲まれた草地を好みます。岐阜県内では北アルプスの北ノ俣岳から乗鞍岳にかけての高山帯に生息します。

 翅を広げた大きさは35mm前後の蝶です。翅の地色はエンジ色をおびる黒褐色で、翅のやや外よりに橙色の帯状紋があり、その中に小さな黒色紋が列をなしています。

画像提供:蝶の生態写真様

【タカネヒカゲ】
環境省:絶滅危惧II類指定  岐阜県:絶滅危惧II類指定

 本州中部の飛騨山脈と八ヶ岳の高山帯の尾根付近に限って生息し、ハイマツの生える緩やかな砂礫地に生息します。岐阜県内では西穂高岳から北ノ俣岳にかけて分布し笠ヶ岳にも記録があります。

 翅を広げた大きさは40mm前後の蝶です。翅の色は淡褐色で後翅裏面にモザイク状の模様があります。

画像提供:岐阜聖徳学園大学

【ヤリガタケシジミ】
環境省:絶滅危惧II類指定  岐阜県:絶滅危惧I類指定

 アサマシジミの高山種です。ナンテンハギの生える火山性の大規模な草原や、山地帯〜亜高山帯の日当たりのよい乾燥した草原を好んで生息します。岐阜県内では北アルプス南端、飛騨北東部で確認されています。

 翅を広げた大きさは30mm前後の蝶です。雄の翅の色は明るい光沢のある青紫色。雌は黒褐の地色に黄褐色の三日月型の斑紋列が翅の外縁に沿ってあります。

絶滅危惧種について(環境省):https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/rank.html

貴重な動植物を未来に残すために

 北アルプスでみられる蝶の多くは、高山植物の踏み荒らしにより生育状況が著しく悪化したり、愛好家による乱獲によって絶滅の危機に晒されているものが多くいます。大切な生態系を守るためにもみなさんの協力が必要です。

希少な動植物の保護活動:https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/90505.pdf

【参考サイト・文献】

環境省:http://chubu.env.go.jp/blog/2019/06/post-836.html
    https://www.tuyukusa-hirayu.com/images/2013/11/kannrikeikakusyo2502.pdf
岐阜県:https://www.pref.gifu.lg.jp/page/4343.html
    https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/143420.pdf
埼玉県:http://www.pref.saitama.lg.jp/a0508/red/documents/16reddatabook-chourui.pdf

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