乗鞍岳の動物 Posted on 2021年1月13日2021年3月24日 これまで、乗鞍岳で見られる植物や野鳥をご紹介してきましたが、実はとても標高が高く寒冷な乗鞍岳には、一般によく知られているツキノワグマ以外にも、天然記念物に指定されているニホンカモシカや、もっと小型の可愛くて可憐な哺乳類などが、厳しい環境でもたくましく生活しています。今回は乗鞍岳に生息する野生動物をいくつかご紹介します。 ツキノワグマ 画像提供:飛騨乗鞍観光協会 乗鞍岳では畳平周辺での目撃情報が多く、近年でも頻繁に目撃されています。 ツキノワグマは,黒色の体毛と丸く比較的大きな耳を持ち、胸の三日月型の白斑が特徴的で、木登りが得意です。 食性は雑食ですが、肉食よりも植物食が多く、木の実や新芽を好んで食し、夏場には昆虫なども食します。 高山帯に生息するツキノワグマでは,夏期には高標高地(2,100~2,300m)に生息していますが、秋期には低標高地(1,000~1,500m)の落葉高樹林帯に生息地を移動させます。 近年、ツキノワグマが大量の果実の種子を、消化によって破壊することなく遠方に運ぶ、種子散布者としての役割があるのではないかといわれています。 ツキノワグマは本来臆病な動物なので、優れた聴覚・嗅覚を駆使して人との接触を避けて生活しています。ツキノワグマ生息地ではクマ鈴などを携行し、クマに人間が近くにいることを知らせましょう。クマは、むやみに人を襲ったりしない動物です。もしもクマを目撃した場合は、クマを刺激せず静かに立ち去りましょう。 ニホンカモシカ ニホンカモシカは乗鞍岳では畳平周辺を含む広範囲で目撃されており、乗鞍岳ふもとの高山市丹生川町の山林や人里などでも度々目撃されているなじみ深い動物です。 二ホンカモシカは本州、四国、九州の山地に生息する偶蹄目ウシ科ヤギ亜科の動物で、日本の固有種として学術上貴重な種とされ、1955 年には特別天然記念物に指定されました。 基本的に単独行動を好み、縄張りを形成して、あまり広範囲には移動せず暮らしています。食性は草食で、縄張りの範囲内の草本を少量食べて生活しています。 好奇心が強く、人を見ても逃げることはなく、反対に人を観察に来ることもあるそう。 【ニホンザル】 乗鞍岳でも高標高の所でも見られる様になりました。 以前は標高の低いところで生活していたニホンザルですが、近年は外敵が少なく危険の少ない高山帯でも生活するようになってきました。ニホンザルは植物を中心とした雑食性で、植物の果実、種子、葉、芽のほか、まれに昆虫なども食べます。メスの成獣と子どもを中心とした数十頭~百頭程度の群れをつくり生活します。昼行性で冬眠はせず、冬場は活動場所を移動する場合があります。 むやみに近づくと咬まれたり引っかかれたりの被害があるので注意が必要です。 【オコジョ】 乗鞍岳全域に生息していますが、滅多に人目に触れることはありません。 亜高山帯〜高山帯に生息しているイタチの仲間です。頭胴長16〜18cm、体重80〜105g程度。体毛は夏と冬では異なり、夏は背面が茶褐色で腹面は白色。冬は全身白色になります。樹洞や石のすき間などにつくった巣で繁殖します。餌は主としてネズミ類、モグラ類などの小型哺乳類や鳥類で、自分の体より大きいノウサギやライチョウなども捕食することもあります。 大部分の生息地で生息条件が明らかに悪化しつつあり、個体数が大幅に減少しているため、オコジョの生活域となる自然林は可能な限り保全するよう配慮が望まれています。 【ニホンノウサギ】 乗鞍岳では畳平周辺でも見られます。 主に低山地から山地帯に多く生息しています。雪の多い地域では冬場は耳の先端を除いて、全身が白くなります。スギ、ヒノキ、カラマツなどの苗木を食害するため、害獣と見なされることもありますが、オコジョなどの肉食獣やワシ、タカなどの猛禽類の餌となり生態系の中で重要な役割を担っています。 【ニホンジカ】 乗鞍岳全域で見られます。 日本の山地に広く分布しています。とくに森林と草原の混ざった環境を好み、主に母子が群れを作り、オスは単独で行動します。完全な草食性で、ヒノキ・スギをはじめ多くの造林木を食害してしまうことが自然植生への影響を問題視されています。 【ヤマネ】 乗鞍岳全域で見られます。 頭胴長65〜80mm、体重は14〜20gですが、冬眠前は30g以上になります。体毛は淡褐色で、腹面は灰褐色です。尾にふさふさした毛があり、背中に黒褐色の線があります。山地帯〜亜高山帯の樹林に生息します。夜行性で昆虫や植物の実などを食べ、主に樹上で活動しています。冬眠する習性があり冬眠場所は樹洞や地表の落葉下などです。山の中の人家で見つかることもあります。国の天然記念物に指定されています。 乗鞍岳の自然を守る活動をしています。 乗鞍岳の貴重な植生や長年培われてきた生態系を末永く守っていくために、平成15年の乗鞍スカイラインのマイカー規制が始まったと同時に、岐阜県では乗鞍環境保全事業を開始し、乗鞍環境パトロール員及び乗鞍自然環境指導員を設置し、乗鞍の自然環境を守る活動をしています。 主な活動は、人の入り込みによる自然環境への影響の低減の為の監視、指導、意識啓発、外来植物の除去、希少動物の生存観察等、多岐に渡って乗鞍の自然の保全を行っています。 ※高山植物の伐採や持ち出しは禁止されています※乗鞍岳には、立入禁止エリアがありますので、登山の際にはご注意ください。※ゴミは必ず各自で持ち帰ってください。 【参考サイト・文献】環境省:https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort5/effort5-3e/joukyu/kuma_2.pdf https://www.env.go.jp/council/former2013/13wild/y130-04/mat04_6_3.pdf岐阜県:https://www.pref.gifu.lg.jp/page/4964.html https://www.pref.gifu.lg.jp/page/4366.html https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/105998.pdf https://www.pref.gifu.lg.jp/page/4925.html https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/16965.pdf岐阜県環境生活部環境企画課:https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/143420.pdf国立研究法人 森林研究・整備機構:https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/seibut/bcg/listindex.htmlパノラマ飛騨:http://panoramahida.iza-yoi.net/norikurashizen.html