のどかな田園風景が広がる高山市丹生川町に、
地元の食材と、無添加調味料を使用した「おばんざい」を堪能できる食堂があります。
今回は、心がホッと穏やかになる〈さとり食堂〉のご紹介です。
心も体も笑顔になる 食事と空間
日本の屋根といわれる飛騨山脈の山々に囲まれ、東西に長く広がる高山市丹生川町。その本通りから1本入ったところに、地元の旬野菜を中心にした「おばんざい」を堪能できる食堂があります。
〈さとり食堂〉と描かれた暖簾をくぐると、まるで実家に帰ってきたかのような心安らぐ空間が広がります。店主の雰囲気も相まって、思わず「ただいま」と言いたくなる温かさです。
店主の智吏(さとり)さんは静岡県の浜松市出身。京都の美大を卒業後、京料理屋で料理を学び、高山に移住してきました。
芸術から料理の世界へ。と聞くと全く違うジャンルに飛び込んだ印象ですが、
「アートは自分が何を思っているかを発信しますが、料理はお客様が何を求めているかを理解してお出しします。アートも料理も同じコミュニケーションツール。表現方法が変わっただけで、私の中では同じジャンルなんです。だからごく自然な選択でした」と話してくれました。
移住先に丹生川町を選んだ理由を聞くと、”清らかな水”、”おいしい野菜”、”自然を身近に感じることができる環境”をあげてくれました。農家さんも身近に多いため、新鮮な野菜やお米を直接仕入れることができるのも魅力の一つ。食材は、出来る限りさとり食堂がある丹生川産を中心に使用されています。
そもそも「おばんざい」とは、京都で代々受け継がれてきた家庭料理のこと。
さとり食堂では、季節の食材と無添加の調味料を使い、和え物や煮物、揚げびたしなど素材の味を活かしたシンプルな味付けの食事を楽しむことができます。
その地の旬を食べる ごく自然なルール
この日頂いたのは、さとり食堂で人気の定食「奥飛騨サーモンの塩こうじ漬け」。
奥飛騨の渓流育ちの大マスを、自家製の塩麹にじっくり漬け込むこと2週間。塩麹に含まれる酵素の力で、元々やわらかい身がより一層とろけるようになり、うま味もアップ。ほどよい塩加減でご飯がすすみます。
漬け込んでから1週間程で食べごろになるそうですが、そこから更に1週間寝かせることで風味もコクも深くなるんだとか。
メインと共に食卓を彩るおばんざいは、季節に合わせて内容が変わります。この日頂いたのは「こもトーフとろっせ豚煮」と「すくなかぼちゃ煮」。
こも豆腐、ロッセ豚、すくなかぼちゃなど、丹生川産の食材がたっぷり!まさに丹生川を味わい尽くす定食です。
その日の仕入れで、おばんざいのメニューを書き換えることもあるそうなので、運が良ければその時だけの特別メニューに巡り合えるかも。訪れる楽しみの一つになりそうです。
1つ驚いたのが、以前来店した際に食べた「ほうれん草のお浸し」。馴染み深い食材のほうれん草ですが、さとり食堂ではピンク色の根に近い部分までお浸しとして提供されました。ほうれん草は根の部分まで食べることができ、抗酸化作用が期待できるポリフェノールなどの栄養価が豊富に含まれているんだとか。歯ごたえがあり、茎や葉の部分より甘みを感じて美味しく食べることができました。
食材を無駄にしない調理法も、京都の師匠から教わったことの一つだそうです。
※こも豆腐 ─ 豆腐を巻き簀にのせて紐でしばり、茹でたもの
※すくなかぼちゃ ─ 古くから丹生川町で栽培されてきた飛騨の伝統野菜
何を食べて、どう生きるか?新たな自分を見返す場所
丁寧に丹精込めて作られた、どこか懐かしい素朴な定食を提供するさとり食堂。
「ここでゆったりと食事をすることで、これまでの自分をリセットし、また新しい気持ちになれるような場所を目指しています」と語ってくれました。
旅行先で、その土地ならではのものを購入される方は多いのではないでしょうか。
さとり食堂を訪れることで、郷土料理の新しい発見や、旬野菜の地元ならではの食べ方を知ってもらえるキッカケになればと思います。
さとり食堂
〈住所〉 岐阜県高山市丹生川町坊方2005-11
〈TEL〉 0577-78-1101
〈営業時間〉 11:00〜16:00、17:00〜21:00
〈定休日〉 日・月・祝祭日
〈公式サイト〉 https://satorishokudou.jimdofree.com/