乗鞍山麓五色ヶ原の森は中部山岳国立公園乗鞍岳の北西山麓約3000haに広がる森林地帯です。自然保護と利用の両立を図るため、歩道や山小屋等の施設整備は自然に配慮したつくりになっています。
さらに、要予約制で、入山規制や入山時におけるガイドの同伴、一日当たりの最大利用人数の制限、利用料金制などを高山市の条例で義務付けています。ここは、国内でも先駆けといえる本格的なネイチャートレイルエリアです。
この五色ヶ原の森と深く関係しているのが乗鞍岳です。
乗鞍火山は、古期火山と新期火山2つの活動の歴史があり、溶岩流の表面は、ブロック状の溶岩が転がり「ゴスワラ」と呼ばれるデコボコした歩行困難な地形を作り出しています。
最奥部には国内ではほとんど見られなくなった手つかずの原生林の森が残されています。
蛇出谷ではいろいろな石が観察できます。
まず、この赤色の石。これは乗鞍岳の石で、噴出したマグマの表面の高温酸化によって赤くなった安山岩です。この赤い物質はベンガラと同じ鉄の酸化物です。ベンガラとは、最古の顔料といわれ、陶器や漆器、染め物など古くから使われています。
白川は、石灰岩から溶け出したカルシウムと硫黄(火山成分)が反応した硫酸カルシウム(石膏)のため表面の白い岩石が目につきます。そのため、魚がいない川となっています。
岩をよく見ると数ミリの穴がたくさんあいているのが見えます。マグマに含まれた水分(最大5%)が圧力の低下で泡を吹き、この小さな穴になりました。この水分の含む量によってマグマが粘性を下げて流れやすくなるか、ドロドロになるか決まります。
この周辺には縞模様になった岩が見えます。これは、マグマの中の成分の違いで縞模様が形成されたためです。流理構造といい、粘性の高いマグマだった証拠です。
森の音楽堂は大きな巨岩に囲まれていますが、この岩は溶岩がブロック状に固まったものです。マグマが流れてきてここで止まった先端の溶岩です。
この露頭の岩は、乗鞍岳の基盤をつくる美濃帯という地層岩石で、チャートといいます。チャートは、海洋の微生物のケイ酸(水晶と同じ成分)の殻が海底に堆積してできた岩石です
仙人小屋を出発して見える白川のこの岩は、火山の岩石で、丹生川火砕流堆積物といいます。火砕流が冷えるときに再び溶けて固まった溶結凝灰岩です。この岩石は、槍穂高カルデラ火山が噴火した時に流れてきた火砕流です。高山市街地まで流れ下っていて、多くの石材として活用されています。