丹生川町西部は飛騨地方の地質を特徴づける飛騨外縁帯という、大陸棚のような場所に堆積した古生代の地層が基盤となっています。
飛騨外縁帯の地層は、大規模な地殻変動によって地下深くに押し込められ、再び地上に現れたものです。
高山市街地に近い下切町の宮川左岸ではその延長部分が明瞭に観察できます。
ここでは大きな圧力を受けて片岩と言われる状態になった地層が確認できます。
高山市下切町の飛騨外縁帯を見た後は、八千代橋から北へ向かい、700m程のところにある下切町の信号を右折、丹生川町に向かいます。新張の信号を左折すればあとは道なりに千光寺へと向かいます。
千光寺は1600年前に飛騨の宿儺が開山したのが始まりと伝えられています。
千光寺がある袈裟山はほとんどが荒城川層という飛騨外縁帯の地層です。頂上近くには火山岩が分布しています。
全体に風化が進み岩石の様子は見えにくくなっています。それでも片岩構造は確認できます。
江戸時代前期の修験僧円空はこの寺に逗留し、多くの仏像を残しました。中でも両面宿儺坐像は秀逸で、東京国立博物館での特別展示の際は、多数の作品の中央に配置されました。
奥飛騨温泉郷一重ヶ根の禅通寺も、円空の逗留した場所で作品が残されています。修験道の山岳修行で、槍穂高をはじめとし、飛騨山脈の山々も多くめぐっていたようです。飛騨山脈とは切り離すことのできない人物と言えるでしょう。
千光寺の駐車場から北に向かって林道を進みます。急カーブもある道です、運転には十分気を付けてください。
山道を下ったところが柏原地区です。国府町方面に向かい岩舟公園の案内看板にしたがって進むと、小さな神社の隣に駐車場があります。
駐車場に車を置いて、20分ほど参道を進むと滝が見えてきます。水量のごく少ない滝ですが、滝の裏側は舟を立てかけたような大きなくぼみになっています。これが滝の名前の由来でしょう。
水の落ちるところには足場が設けられ、滝に打たれられるようになっています。頭痛や眼病が治るといわれています。
滝の周囲には、右から左に下る地層の境界が見えます。
このあたりの地層は、飛騨外縁帯の森部層という、泥や砂が堆積してできた古生代の地層が下敷きになっています。
2億5000万年以上前に堆積して、地表に出た森部層と、丹生川町と上宝町、さらに国府町の3町境界にある大雨見山を中心として、およそ6500万年前に活動した火山の溶岩の境界が見えているのです。滝の右側にはその境界をはっきりと見ることができます。