奥飛騨温泉郷は平湯、福地、新平湯、栃尾、新穂高の5つの温泉地から構成されています。自然湧出量は国内第三位と言われ、毎分37トン近いお湯が湧出しています。その歴史は古く、福地温泉には村上天皇が湯治に来られたという入湯伝説があります。
泉質は比較的単純なものが多く、地下に浸透した降水が地下深くに届く前に加熱され湧出しているようです。
福地温泉では上宝火砕流の給源火道(マグマの通り道)が、周辺を侵食され尾根になっているのを見ることができます。福地、一重ヶ根地区は飛騨外縁帯の地層が広く分布し、日本最古の化石を産出しています。
福地温泉には付近で出土した化石を集めた、福地化石館もあります。
乗鞍岳北部の四ッ岳から、4万年前に流れ出した溶岩の上から流れ落ちる、日本の滝百選に選ばれた幅6m高さ64mの滝です。
馬蹄形に見える溶岩の下には、およそ10万年前に山体崩壊した烏帽子火山の崩落土砂が見えています。
滝の手前の遊歩道脇には、海洋底で堆積した美濃帯の堆積岩が露出しています。
飛騨山脈の住人、ツキノワグマがいるクマ牧場の付近から西を眺めると、64万年前に噴火した上宝火山の給源火道がつくる尾根と、上宝火砕流堆積物の節理面がつくる垂直の壁「福地壁」を見ることができます。
福地は化石の産出地です。一ノ谷は化石産地として国の天然記念物に指定されていますが、保全のため立ち入りが制限されています。
福地の西にそびえる福地山は大陸棚のようなところで堆積した飛騨外縁帯、福地層の露出するところで、登山道の石灰岩の転石にはフズリナなどの化石が必ずといってよいほど確認できます。
10分ほど登ると焼岳展望小屋があります。
福地山登山道の反対側に入ると、朝市があります。そこを抜けたところが「昔ばなしの里」です。
ここには入浴施設「石動(いするぎ)の湯」、福地周辺で採取された化石を集めた「福地化石館」があります。移築された古民家の2階にたくさんの化石が展示されています。
この谷では日本最古、オルドビス紀の歯状の微化石であるコノドント化石が発見されています。化石を含んでいた一重ヶ根層より古い、岩坪谷層という地層もあります。今後の調査研究によっては、日本で最も古い地層となるかもしれません。
平湯川と岩坪谷合流部から少し下ると「しのぶ砂防えん堤」があります。自然石を利用し景観への影響を配慮したえん堤です。全国でも珍しい堤体内部へ入ることができるえん堤で、内部から流れ落ちる水を見ることができます。焼岳火山群から流出してくる大量の土砂に対応するための砂防えん堤です。