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飛騨山脈のジオのおはなし

第50章 穴毛谷の穴毛大滝

穴毛谷の穴毛大滝

穴毛谷は、笠ヶ岳の南面から東側に回り込み、杓子平につながる谷です。
その最奥部、杓子平の下に穴毛大滝があります。谷が東に曲がっているため、下から滝は遠望できません。

穴毛谷には、かつて登山道がありましたが廃道になり、入口には多くの砂防えん堤があります。冬から春にかけては雪崩の巣として、夏は雪渓の踏み抜きや落石の危険があるとして、危険地域とされます。

そこで、雪渓がほぼ無くなった晩秋の好天日に穴毛大滝に行ってきました。谷を埋め尽くす岩塊は、穴毛谷層の岩石です。
穴毛谷層は、約6500万年前に噴火した溶岩や高温の噴出物が交互に堆積した地質です。
高温の噴出物は、堆積後、その熱と自重によって溶け直して、硬い溶結凝灰岩になりました。噴出物は1500m以上堆積しています。

これらの岩石を作った火山は、笠ヶ岳コールドロンとよばれています。コールドロンとは、地形が残っていればカルデラのことです。当時の地形は侵食されて残っていません。代わりに火山内部に堆積した溶岩や火山噴出物が地表に表れて、笠ヶ岳の側面を飾っています。

穴毛大滝は、落差約40m。青空の下、鎧のような溶結凝灰岩の柱状節理をうがって、側面の壁から穴毛谷にとうとうと流れ落ちていました。柱状節理は、溶岩や溶結凝灰岩が冷えて固まる時、その体積が減少することに伴う重力に垂直な多数の割れ目です。柱状の岩石が縦に並んでいるように見えます。滝の右横に砂礫(れき)の斜面があり、そこを登れば滝の上部に行けそうですが、ここで下山しました。穴毛大滝は、斜面が削れ、谷が始まる所にあることがわかりました。
(飛騨地学研究会 中田裕一)

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