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第48章 平湯の河岸段丘

平湯の河岸段丘

平湯は、温泉が湧く平地であったため、湯の平とよばれていました。平湯の平地の西側には、平湯川があり、階段状の地形の下を流れています。

この地形を河岸段丘といい、平らな部分を段丘面、急な部分を段丘崖といいます。平湯の段丘面は4段あり、平湯の街は、最も上の段丘面にあります。その下の段丘面や段丘崖は、自然探索路として整備され、植生を観察できます。

自然探索路に転がる岩石を見ると、火山から噴出した安山岩の溶岩が多く転がっています。中には、溶岩に含まれていた気泡が多い安山岩もあります。他に、チャートなどの堆積岩もあります。

付近にある火山は、乗鞍岳、アカンダナ山、白谷山、焼岳ですが、乗鞍岳以外は、平湯の段丘面より下流側(北側)にあるので、平湯のこれら安山岩の供給源は、平湯の南にそびえる乗鞍岳だといえます。

平湯の南側に、乗鞍岳の烏帽子火山体や四ッ岳火山体があります。烏帽子火山の噴火は12万年前に終わり、その後、十石山から大崩山以北(平湯側)の烏帽子火山の山体は崩壊しました。そして4万年前、崩壊地の中に四ッ岳火山が噴火し、四ッ岳溶岩が平湯のすぐ近くまで流れました。平湯大滝は、この溶岩の上にあります。

以上から、平湯の河岸段丘の安山岩は、烏帽子火山体の崩壊に伴う岩塊や四ッ岳溶岩だと推測できます。また、チャートなどの堆積岩は、付近に分布する古い地質に由来しています。

谷が堆積物で埋まると、川は元の高さになるまで、下方侵食します。その過程で、元河床が段丘面として残り、時間と共に下の段丘面ができます。これを堆積段丘といいます。
(飛騨地学研究会 中田裕一)

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