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飛騨山脈のジオのおはなし

第43章 福地壁

福地壁

乗鞍青少年交流の家へ向かい岩滝地区を通ると、頭上を橋が交差します。この橋の北に「岩滝トンネル」があり、トンネルの両側には岩盤が切り立っています。

向かって左側は石切り場として石材が切り出されています。高山駅の東口の舗道の敷石はここから切り出された石材が使用されています。岩壁の高さは、およそ20mはあるでしょうか。

この岩は上宝火砕流堆積物とよばれるもので、およそ64万年前に奥飛騨温泉郷福地の近くで起きた、大規模噴火の噴出物です。

奥飛騨温泉郷のクマ牧場駐車場の向かい側にある尾根に、その噴火口にマグマを供給した跡が残っています。そこと石切り場の距離は直線で18㎞もあります。噴火口の近くではどのくらいの厚さに積もっているのでしょう。

福地温泉から登る福地山から、その様子を見ることができます。登山道の途中、第三展望台からは「福地壁」と呼ばれる大岩壁が見られ、垂直の岩壁がおよそ2㎞にわたって連続しています。

岩壁がつくる尾根の上にアカマツらしき木が見えます。アカマツの樹高は15m~30mといわれますので、その高さと岩壁の高さを見比べると、いかに岩壁が巨大であるかがわかります。正確な高さはわかりませんが、この近くでの火砕流堆積物の厚さは200mといわれています。

福地壁は、上宝火砕流が堆積した火砕流台地が侵食された後のへりにあたります。壁をつくる火砕流堆積物は、堆積後溶け合って固まり、溶結凝灰岩という固い岩石になっています。
(飛騨地学研究会 直井幹夫)

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