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飛騨山脈のジオのおはなし

第42章 本郷の河岸段丘

本郷の河岸段丘

上宝町本郷は、高原川沿いの河岸段丘(河川が作った階段状の地形)の平坦地にあり、地域の中心を形成しています。高原川流域には、本郷の東の長倉や飛騨市神岡町殿、坂巻付近などにも河岸段丘があります。

最も有名なのが本郷付近の河岸段丘で、上から平坦面ができた順に本郷面、宮原面、中コセ面、見座面の4段の段丘面があります。かつて、大規模な火山泥流が発生し、高原川の谷を埋め尽くしたと考えられます。火山噴出物が、大量の水(洪水、湖決壊など)とともに流出、移動した火山泥流を、ラハール(火山泥流、土石流)と呼びます。

その後、高原川が本郷面を残して下方へ侵食して、宮原面をつくりました。このように高原川は、泥流に埋められる前の高さに戻るため、順に下の段丘面をつくって下へ侵食してきました。そのため段丘面の下は、火山の土石流を伴う泥流堆積物です。急流に運ばれてきた泥流(土石流)は流速が小さくなると運んだ土砂を、荷物を下ろすように平らに堆積させます。

最も古い本郷面に含まれる溶岩の礫(れき)ができた時代、つまり大規模火山泥流の時代が最近調査されています。それによると13万年前~16万年前とされています。

焼岳火山群が活動を始めた頃と本郷面ができた年代が重なるので、泥流を伴う大量の火山噴出物をもたらした火山は、焼岳火山群と考えられてきました。最近は、乗鞍岳の烏帽子火山体北部(平湯側)の山体崩壊とする意見もあります。烏帽子火山は、高原川上流、平湯の南方にある乗鞍岳の火山体のひとつで、十数万年前に山体崩壊があり、火山体の大部分がありません。
(飛騨地学研究会 直井幹夫)

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