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飛騨山脈のジオのおはなし

第39章 本郷の鳴滝(なるたき)

本郷の鳴滝(なるたき)

鳴滝は、本郷平から蔵柱川の谷間に降りたところにあります。水音を響かせる高さ5m程度の小さな滝です。田んぼが広がり家屋が点在する本郷平の下に深い谷間と滝があるのは、不思議な感じがします。

この鳴滝は里に近いため、次のようなガオロ(カッパ)の伝説があります。
名主の作男が田植えの後に馬を引いて鳴滝に行き、馬を洗って帰りました。馬を馬屋に入れると、馬のしっぽに滝の主であるガオロがつかまっているではないですか。ガオロは、馬から落ちて皿の水を無くしてしまいました。作男は、かわいそうに思いガオロを滝に戻してやりました。すると、次の朝、馬屋の土間にガオロのお礼のイワナが置いてあった、ということです。

 さて、滝は地質の境にあり、上流側は飛騨外縁帯の荒城川層という地質で、弱い変成作用を受けた火山岩や堆積岩です。下流側は飛騨花崗岩類という地質で、地下でマグマが冷えてできた花崗岩です。

上流側の飛騨外縁帯は、飛騨を横切って、幅数㎞から30㎞で細長く断続的に分布しています。古生代(2億4000年前~5億7000万年前)に形成された岩石からなり、中生代のジュラ紀中頃(1億8000万年前頃)に、大陸の一部であった飛騨付近に接したとされます。

下流側の花崗岩は、中生代ジュラ紀中頃(1億8000万年前頃)にマグマとして付近に入り込み、上流側の荒城川層の岩石に熱変成を与えています。
上流側と下流側の岩石の違いが侵食の程度の違いとなり、滝をつくる段差になっています。下流側の花崗岩のほうが、岩石に隙間が多いため侵食されやすいといえます。
(飛騨地学研究会 中田裕一)

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