飛騨山脈のジオのおはなし個別コラムページトップ

飛騨山脈のジオのおはなし

第36章 上野平桐山礫(れき)層

上野平桐山礫(れき)層

上野平には、河川などに流れ込んだ土石流や火砕流、泥流が礫層を含む地層として堆積しています。

その中で、桐山礫層と名付けられた礫層は安山岩(火山岩)を礫として含むことで、他の礫層と区別されています。その安山岩の中には穂高連峰から長野県側に落ちたものがあり、さらに奥又白花崗岩という長野県の梓川上流の岩石が見られることで、64万年前の上宝火山による上宝火砕流がその川の流れをせき止め、今の高原川へと変えるまで、梓川が上野平に流れてきていたことを示しています。

このように、礫層は含んでいる礫種によって礫層をもたらした川がどこから流れてきたかを示します。そのため、含んでいる礫種で礫層を区別しています。また、特別なことが起きない限り、下に堆積した地層(礫層)が先に堆積した地層になります。しかし、礫種は堆積した順序を示すものではありません。

そのため、桐山礫層は槍穂高カルデラ火山の丹生川火砕流より先に堆積したという考え(桐山礫層の礫に丹生川火砕流堆積物が無いという観察結果から)と、丹生川火砕流より後だ(丹生川火砕流をもたらした穂高安山岩が含まれているから)という考えの対立が生まれました。

礫層の砂泥の部分に含まれる鉱物を調べると、一番上には上宝火砕流と同じ黒雲母が見られ、その下に丹生川火砕流と同じ輝石が、さらに下には大洞層という地層と同じ黒雲母が見られ、その下にも他の礫層が続いていました。上野平では、200万年以前から堆積があり、できた礫層の間に丹生川火砕流堆積物を挟んでいたのです。
写真は、中部縦貫自動車道の工事現場の写真です。
(飛騨地学研究会 鷲見 浩)

トップへ戻る