飛騨山脈のジオのおはなし個別コラムページトップ

飛騨山脈のジオのおはなし

第35章 材木岩

材木岩

双六渓谷を進むと、山之村へ向かう大規模林道と、双六ダムへ向かう市道との三差路があります。市道を進むと「岩波橋」が見えてきます。橋を渡ると、正面に「材木岩」「栃の連理木」の案内看板が目に入ります。30分ほど登り、大きな倒木を越えると現地到着です。

まず目に入るのは、右側山腹に横積みにされた材木のような岩です。木口が不揃いで、私にはパスタの束の折れ口に見えます。材木岩は全国にありますが、横積み状態の材木はここだけでしょう。

材木岩は、噴出し堆積した高温の火山岩が冷えるときに体積が縮むことで、規則的な縦の割れ目ができ、柱をびっしりと並べたようになったもので柱状節理です。ここの材木岩は、64万年前に福地温泉の近くで噴火した火砕流で、「上宝火砕流堆積物」と呼ばれます。

上宝火砕流堆積物は、丹生川町の八本原をはじめ広範囲に分布しています。ここは分布範囲の北西の端にあたり、他の場所に比べ積もった厚みも小さかったようです。
横積みになった材木の下には、少し傾いてびっしりと並んだ柱が見えています。もとは縦にきれいに並んでいた柱状節理の材木に大きな力が加わって、下部は根元から傾き、上部は折れて横倒しになったのかもしれません。

また、横になった柱状節理は、折れたのではなく谷状地形を流れた火砕流が側方から冷やされ、節理が壁面に垂直方向にできたという成因説もあります。
材木岩には、弘法大師がお寺をつくるために集めた材木を、天の邪鬼に岩にされたという伝説があります。
(飛騨地学研究会 直井幹夫)

トップへ戻る