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第34章 鼠石(ねずみいし)

鼠石(ねずみいし)

鼠石は、双六谷の入口近くの道路脇にあり、角が取れて表面が磨かれたように滑らかになっています。灰色っぽい石の中に、ネズミを思わせる白い模様が浮き出ているので、鼠石とよばれます。

「農協たかはら」によると、この鼠石には、次の由来があります。「その昔、洪水の後、双六の忠五郎が、双六川の川岸の大岩にネズミそっくりの模様のある大岩を見つけ、道まで運びあげました。この鼠石を、長倉の桂峯寺に運び養蚕期になると、双六谷のネズミが大暴れして、蚕や繭を食べ荒らし、疫病まではやりました。そこで、鼠石を元の双六に戻すと、ネズミの被害は無くなり、病気も治まりました。村の言い伝えとして、この石は9m以上動かしてはいけないといわれています。」

 
鼠石には、女神のお鏡餅を盗んだネズミが石に閉じ込められたという伝説もあります。
鼠石は、双六谷によくある花崗閃緑岩からできています。白いネズミの輪郭は、岩石の鉱物のひとつである石英が、集まった部分です。石英は、透明な鉱物で、大きな結晶になれば水晶です。小さな石英が集まると白っぽく見えます。灰色っぽい部分は、主に角閃石という黒っぽい鉱物が混じっています。
花崗閃緑岩は、花崗岩の仲間の岩石で、地下でマグマがゆっくり冷えてできます。冷える過程でできた隙間に、熱水が通ると、隙間に石英が集まり、岩石の中の白い筋や模様となることがあります。

双六谷の花崗閃緑岩は、飛騨花崗岩類という地質の一部で、中生代ジュラ紀中期(1億8000万年前)頃にできた岩石です。飛騨北部に分布している日本列島の土台石の一部です。
(飛騨地学研究会 中田裕一)

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