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第33章 盤の石

盤の石

盤の石は、80×60cmの面がある方形の石で、囲碁や将棋の台を思わせる形をしています。双六谷を5kmほど入った道路脇に傾いて埋まっています。裏側の見えない面に碁盤の目があるともいわれます。

明治・大正から昭和初期にかけての登山家、冠松次郎は、著書「双六谷」の中で、「暗鬱幽棲(あんうつゆうせい)な双六谷は、怪異の谷、伝説の谷である。」と述べ、盤の石の伝説も紹介しています。

盤の石の近くに旧上宝村教育委員会の立て札があり、次のように書いてありました。「中秋の名月に、天上の神々が双六谷で囲碁や双六をしました。ふとしたことから争いが起きて、一人の神様が盤も賽(さいころ)も谷へ投げつけました。賽は谷に落ちて、賽ヶ淵とよばれています。盤の石は、途中で止まりましたが、神様が使った盤なので、触れると暴風雨や降雹(こうひょう)が起こるといわれています。」

盤の石の山側の岩盤には、格子状の割れ目が残っているので、盤の石は、岩盤の一部の可能性が高いと考えます。少なくとも盤の石の角は丸くないので、河川から流れてきた礫(れき)ではありません。

盤の石を割って調べることはできませんが、盤の石は、この付近にある飛騨花崗岩類(花崗岩~花崗閃緑岩)のようです。中生代ジュラ紀中期(一億八千万年前)頃、地下深部でマグマが長い年月をかけて冷えてできました。
花崗岩の仲間の岩石は、縦横の亀裂が入って風化し、割れ目が拡大し外面が石垣のようになることがあります。その石垣の一部が、風化から残り、盤の石という伝説の石になったのでしょう。
(飛騨地学研究会 中田裕一)

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