焼岳の黒谷溶岩の末端部にできた滝
奥飛騨温泉郷中尾から焼岳への登山道の途中、展望所では、白水谷にある「白水(しらみず)の滝」を望むことができます。
この滝は、遠くからだと名前の示すように優雅さを感じますが、近くで見ると落差約45mもある豪快な滝です。
かつて焼岳は、硫黄ヶ岳と呼ばれていました。その名が示すように硫黄を採取していました。この硫黄分で谷水が白濁しています。川や滝の名称は、ここからきています。なお近くには、鉄成分を含む赤さびた岩石もあります。
滝の上半分は、「黒谷溶岩」と呼ばれる安山岩で、多くの火山で見られる一般的な火山岩です。焼岳火山帯は、おおよそ10万年前に活動した旧期活動期と約3万年前に始まった新期活動期に分けられます。「黒谷溶岩」は、新期活動期の初期に流れた溶岩だと考えられています。年代測定によると、黒谷溶岩は、約1万5000年前に流れて固まった溶岩です。
滝の下半分、溶岩の下は、土石流堆積物です。白水の滝は、土石流堆積物の上を流れた黒谷溶岩の末端部が急斜面になっているためできた滝だといえます。
白水の滝付近は、今でも、温泉成分がぎっしりとついていることから、焼岳が活火山であることを感じます。これらの噴出物質がたくさん堆積し、急斜面を作り出し、泥流や土石流を発生させています。
白水谷は、割谷や黒谷と合流して足洗谷になります。下流には、土石流を抑えるため、「足洗谷第1号砂防えん堤」と呼ばれる1933(昭和8)年に造られた文化遺産があります。戦前から、自然災害から守るため、さまざまな工夫を先人は行ってきたことがうかがえます。
(飛騨地学研究会 中口清浩)