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第10章 穂高連峰その2

穂高連峰の世界一若い深成岩

コラム10章画像多くの方が新穂高ロープウェイに乗り標高2000mの空気を吸いに行かれたと思います。西穂高口駅屋上展望台からは素晴らしい景色を眺望できます。登山届を出し2時間ほど山歩きをすると西穂山荘に着きます。さらにハイマツやイワカガミが生える登山道をたどると丸山まではなだらかな登山道ですが,その先は西穂高岳の岩稜が天にむかってそびえています。
丸山あたりから,登山道を造る岩石がこれまでの白い岩石から灰色を帯びた岩石に変わります。灰色を帯びた岩石は,前回お伝えした溶結凝灰岩です。この岩石は氷河に削られ切り立った岩稜となっています。白い岩石は,溶結凝灰岩を噴火させたマグマが地下でゆっくり冷えて固まった深成岩の仲間です。名前は滝谷花崗閃緑岩といいます。
一般に深成岩は地下3kmより深くで700℃くらいのマグマが数十万年かけて冷え固まってできます。その上の岩石や地層が侵食されると,周囲より軽い岩石の深成岩は隆起します。さらに上部が侵食されると隆起するということを繰り返しますが,深成岩が地表に現れるまで数百万年以上の時間がかかります。しかし,穂高連峰では隆起と侵食がすさまじい速さで行われたため,滝谷花崗閃緑岩はとても短い時間で標高2000mの高さに到達したのです。
140万年前に固まったと判明した1992年には世界一若い深成岩と呼ばれました。(2012年には黒部川花崗岩が80万年前に固まったと報告されています。)
(飛騨地学研究会 鷲見 浩)

 
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