滝谷は槍平を源流とする蒲田川右俣谷に最初に合流する谷です。槍穂高連峰の中間点、大キレット直下の谷です。岩の墓場ともよばれるところですから、皆さん登りましょうとは言えません。
でも、ここは飛騨山脈を持ち上げた、世界一若い滝谷花崗閃緑岩の模式地なのです。両岸は垂直に切り立ち、谷間には崩落してきた穂高安山岩と滝谷花崗閃緑岩の巨大れきが塁堆しています。
新穂高ロープウェイしんほだかおんせん駅の奥にある駐車場からスタートです。右俣林道を進みます。対岸は中崎尾根、笠ヶ岳カルデラの一部で、カルデラ内堆積物特有の切り立った壁が迫っています。
中崎尾根には右俣谷から左俣谷へと発電用水を送るトンネルが掘られています。
駐車場から3㎞ほどで穂高平到着です。
ここには避難小屋があり、トイレも利用可能です。
穂高平は右俣谷と小鍋谷合流部の河岸段丘で、平坦地が広がり夏場には和牛の放牧地として利用されています。ここから見るジャンダルムは格別です。
穂高平から河岸段丘と、西穂高岳から下る尾根の境界部の作業道歩きます。
2.5kmほど進むと大きな沢が右から現れます。河原には白っぽい滝谷花崗閃緑岩の礫がたくさん転がります。これが白出沢の名前の由来です。作業道はここまでです。
沢の奥にはジャンダルムがそびえ立ち、見上げると首が痛くなるような景観です。
右俣林道はここまでです。これから先は槍平を経て、槍ヶ岳を目指す登山道を歩きます。
登山道は手入れされ、歩きやすい登山道です。蒲田富士のふもとを歩きます。
右側からいくつかの小さな谷が出てきます。白出沢から2.5㎞、谷が左へ曲がる手前で、両岸を垂直にえぐられ、深く切れ込んだ谷が右から合流してきます。
谷の正面には雄滝、その奥には北穂高岳と滝谷ドーム。この先はクライマーの世界です。トレッカーの私たちは眺めるだけにしておきましょう。岩の墓場ともいわれる場所です。
滝谷を越えてすぐのところに岩にはめ込まれたレリーフがあります。1929年に滝谷を始めて登った藤木久三のものです。
新穂高温泉から滝谷までは8㎞、高低差650mの行程です。時間と体力に余裕があれば、あと1.5㎞、標高差227mを欲張ってみましょう。
藤木レリーフから登山道をさらに進みます。この辺りから登山道はれきが目立ちます。
槍ヶ岳を削った氷河のモレーン、アウトウォッシュ堆積物が谷を埋め、谷幅も次第に広がります。右側に南沢を見るころから地形は平坦になり槍平に到着です。
この辺りから滝谷を眺めると、滝谷の左岸上部に、東に傾いた地層境界が見えます。滝谷花崗閃緑岩と、穂高安山岩の境界です。