乗鞍山麓五色ヶ原 シラビソコース
シラビソコースの名前の由来は、このあたり一帯に多く見られるシラビソにちなんでいます。
ちなみに、コースの後半に「シラベ沢」を通りますが、この「シラベ」とはシラビソの別名です。シラビソは、マツ科モミ属の常緑針葉樹で日本の固有種。主に標高1500~2500mの亜高山帯に広くに分布しています。
コース一帯は、約9000年前に乗鞍岳の新期活動により、権現池火口から流出した平(ひら)金(がね)溶岩が谷を埋めるように分布しています。
新しい噴出物である溶岩塊がゴロゴロと広がっており、地元ではゴスワラとよんでいます。
風化侵食があまり進んでいないため、植物の生育に必要な土壌が不十分です。
シラビソコースの標高は、1400~1600mで、本来みられるバイオーム(植物群系)は、主に山地帯(700~1500m)の夏緑樹林(ブナ、ミズナラなど)になるはずです。
しかし、実際には亜高山帯に属するシラビソ・コメツガなどの針葉樹が結構多く見られます。これは、保水力・養分に乏しい溶岩地帯の厳しい環境のなかでは、亜高山帯植物群の方が勝っていることを意味しています。
また、このコースでは、新しい溶岩に関わる様々な地形すなわち溶岩堤防、溶岩じわ、水位の変わる池、湿原あるいは多くの滝が随所に見られます。
沢上谷やシラベ谷の山側には、溶岩堤防が細長く連なっています。溶岩が流下してきたときに、山側に接した部分は早く冷えて固まります。しかし、中央部分はそのまま流下し、両側部分より低くなることにより溶岩堤防ができます。
このコースでは、溶岩がつくる様々な地形と植物の関係が堪能できます。
写真は布引の滝
(飛騨地学研究会 下畑五夫)