笠ヶ岳は約6500万年前に噴火したカルデラ火山です。一般にカルデラ火山といえば陥没地形をイメージしますが、笠ヶ岳はカルデラの周辺が侵食されて、カルデラの内部が露出しています。穴毛谷はカルデラ内部が侵食された場所で、カルデラ内部の堆積物の様子が明瞭に見えているところです。カルデラの内部は、ぶ厚い溶岩や火砕流堆積物(溶結凝灰岩/ようけつぎょうかいがん)が互層になっていて、溶岩は割目が発達し垂直の岩壁となっています。東側から見ると複数回の噴火を物語る明瞭な横縞模様をつくっています。
焼岳は、頂上北峰周辺と南西斜面などからは今も噴気を上げ続けています。大正4年、水蒸気爆発により発生した土石流が梓川をせき止めて上高地の大正池を形成しています。昭和37年には、水蒸気爆発で焼岳小屋が押しつぶされ、4名の負傷者が出ています。
日本で5番目の高さ、3180mの槍ヶ岳は、およそ7万年前に始まり1万年前まで続いた地球上最後の氷河期を経験しています。山頂を中心に4つの氷河がその山体を削り、その中心に三角形の特徴的なピークがあります。また、写真でもわかるように東に20度ほど傾いています。この傾きは、飛騨山脈が急速に上昇した時に起きた傾動運動により冷却節理が東へ傾き、このために東側の岩盤崩落が続いて西よりも急な斜面を作ったためとされています。
飛騨から見る穂高連峰は、西穂高岳から北穂高岳まで続く急峻な尾根の連続です。鋸歯状山稜(きょ しじょうさんりょう)ともよばれる景観は、国土地理院の日本の典型地形にも掲載されています。登山者からは、国内の最難関ともいわれるルートとして も知れ渡っています。太平洋プレートの圧力や、マグマの上昇などが相まって、驚異的な速さで上昇した山脈ならではの山岳景観です。
ジャンダルム(3163m)は憲兵を意味するフランス語で す。飛騨山脈主稜の最高峰、奥穂高岳(3190m)の前に立ちはだかる姿を飛騨側から見ると、一枚の岩の板のように見えます。槍ヶ岳から西穂高岳を範囲とする陥没カルデラ火山のカルデラ内堆積物である穂高安山岩が稜線部を構成しており、西側の谷にはカルデラ火山のマグマが地下で冷却固結した滝谷花崗閃緑岩(たきだにかこうせんりょくがん)が露出しています。この約140万年前にできた滝谷花崗閃緑岩は世界の中でも若い花崗岩の仲間のひとつです。
飛騨山脈の主稜線の中核、槍・穂高連峰は南北に伸びたカルデラ火山でした。火山活動のもととなったマグマは、噴出したものはカルデラ内に堆積し穂高安山岩に、地下深いところでゆっくり固まったものは滝谷花崗閃緑岩(たきだにかこうせんりょくがん)になっています。丸山は西穂独標の直下にある一つのピークで、丸山と独標の間には穂高安山岩と滝谷花崗閃緑岩の境界があります。崩れてきた穂高安山岩のれきにおおわれていますが、このあたりで登山道の色が、風化花崗岩の白色から穂高安山岩の暗灰色へと変化しています。
笠ヶ岳カルデラ火山の外側カルデラにある、垂直の壁に取り囲まれた2168mの岩峰です。4期に分けられる笠ヶ岳カルデラ火山の活動のうち、第2期に形成された層厚1600m の溶岩を主体とする笠谷層に含まれ、溶岩の節理(割目) が垂直の岩壁を構成しています。クライマーからの人気も高く、県道槍ヶ岳公園線から2km余りの位置にあり、双眼鏡を使えば岩壁にとりつくクライマーの姿を見ることもできます。
左俣谷から真北に向かって笠ヶ岳山体に深く刻まれた穴毛谷は、カルデラ火山の陥没地形であるカルデラ内部にぶ厚く積もった、カルデラ内堆積物を深く刻み込んでいます。高温の溶岩や溶結凝灰岩が繰り返し堆積した地層は、収縮による節理面が発達し、垂直の岩壁が連続しています。垂直の岩壁は崩壊しやすいと同時に、雪崩がしばしば発生する場所です。2000年3月に発生した雪崩は国内で発生した最大規模の雪崩でした。