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飛騨山脈のジオのおはなし

第18章 上宝町細越の「杖石」

高原川が削り残した奇岩

コラム18章画像 高原川に沿って国道471号が通っていますが、神岡町と奥飛騨温泉郷の栃尾とのほぼ中間点の道路脇に、垂直に切り立った巨岩が目に入ります。すぐ横に駐車場があるので車を止めて観察してみましょう。頂上まで登ると高原川の急流や周辺が見渡せ、なかなかよい眺めです。
 この巨岩を弘法大師の杖に見立てて「杖石」と呼んでいます。明治初期に書かれた『斐太後風土記』に杖石の絵図があります。高原川の川原の中に切り立った岩は、昔から人々の関心が持たれて敬愛する弘法大師の登場となったのでしょう。絵図には「高さ高さ20丈
(約60m)」と書いてありますが、実際はふもとから45mほど高まっています。
 豪雨となると濁流が高原川に押し寄せ、巨石を流し岸辺を削っていく激しい侵食の様子をみると、なぜ杖石だけが残ったのか昔の人も不思議に思ったことでしょう。
 杖石を造っている岩石を見たところ、「溶結凝灰岩」と言って熱い火山灰が押し固まったとても固い岩石であることが分かりました。杖石の南側にある大雨見山周辺に広がる6500万年前の火山活動の時に噴出した岩石です。
 杖石と高原川対岸との幅は、ここだけ狭くなっているので、特に杖石付近がとても固くなっていると思われますが、何故ここだけが特別なのか、と疑問が残ったままです。
 杖石の頂上には、弁財天が奉られ、参拝すると良縁に恵まれると言われています。
(飛騨地学研究会 岩田 修)

 
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