乗鞍岳は、古くから神仏のおられるところとして、山そのものがご神体とされ、山麓民に広く崇拝されてきました。乗鞍岳への登山は、乗鞍山縁起によると、大同2年(807)に坂上田村麻呂が東国平定のときに登山祈願したのが始めと言われており、修験僧である円空も乗鞍岳を開いた一人です。信仰の山として、修験のため行者達が登ったのが乗鞍登山の始まりでした。行者たちが先達となって一般の信者を案内していました。飛騨側では丹生川の岩井谷沢上地区から多く登ったようで、名古屋方面の信者が多く、弘徳霊師、仏国行者、桂覚、心徳らの先達が多くの信者を引き連れ、毎年乗鞍岳に登った歴史があります。

剣ヶ峰山頂に建つ鳥居
剣ヶ峰山頂に建つ鳥居
開山祭での獅子舞
開山祭での獅子舞
剣ヶ峰山頂の乗鞍本宮
剣ヶ峰山頂の乗鞍本宮

〇沢上地区の乗鞍祭り
丹生川の岩井谷沢上地区では、毎年8月8日に地区住民全員で乗鞍岳に登頂し、乗鞍祭りを行う文化がありました。山頂で獅子舞いを奉納
し、盛大なお祭りをしてきました。現在は畳平の中之社にて乗鞍祭りが行われています。
〇雨ごい
「飛州志」によると、高原郷の村々では干ばつに見舞われると、雨ごいのため村人達が乗鞍岳に登り大丹生池の周りで祈願していました。大丹生池は飛騨の人たちにとって雨ごいの場であり信仰の池でした。

乗鞍信仰にまつわる寺社仏閣が多数あります。
〇剣ヶ峰山頂に建つ乗鞍本宮・朝日権現社
剣ヶ峰山頂には、2つの神社がお互いに背中合わせで東西に向いているのが特徴で、岐阜県側が乗鞍本宮、長野県側が朝日権現社です。
〇乗鞍本宮中之社
畳平にあります。御朱印、お守りなどを授与しています。8月8日に例祭が行われています。
〇乗鞍権現社
乗鞍平湯登山道の途中にあります。
〇千光寺・円空仏寺宝館
丹生川地区にある千光寺は、高野山真言宗の名刹で約1,200年の歴史があります。円空仏寺宝館では「立木仁王像」「両面宿儺坐像」など64 体の円空仏が祀られていて拝観できます。千光寺のある袈裟山はスギ、アカマツ、モミ、ケヤキ等の良好な緑地として岐阜県緑地環境保全地域に指定されており、巡拝路や野鳥観察の森となっています。