あなたが現在見ているのは 飛騨の宴会で歌われる「めでた」

 飛騨高山には宴席の祝い唄に『めでた』というのがあります。

『めでた』は、飛騨地方に限定された独特の祝い唄で、北飛騨の神岡では別名『みなと』、古川では『若松様』といい、昔から宴席で歌われ続けてきたものです。

「めでた」の起源は、「飛騨を治めた金森家の2代目、金森可重の下屋敷が完成した時に棟梁が披露して『めでた』と名付けたと言われるが定かではない。江戸時代後期,天保時代に大流行した。そして『ぶり街道』に沿って広がったといわれている。高山御役所手代元締の菊田秋宣の『広瀬桜之花記』に『めでた』が出てくる。七七七五調で、多人数で歌う音頭形式の唄である。調子を揃える為、最初の句を1人が歌い出し、その後に他の人々が歌い出す。(平成28年斐太紀15号』(飛騨学の会)から引用)

飛騨の宴席には「めでた」が付き物であることは知られていますが、ある時大先輩から、なぜ「めでた」を歌うのか、その意味について諭されたことがありました。

『昨今、「めでた」が単なる宴会プログラムのひとつとしてのみ捉えられている。主催者側としては、宴会の進行や時間などの制約があることは理解できるが。』と憂いておられました。

地域の小さな宴会では、長老をはじめとするお客様が集う。配席は年功序列で席順が決まることが多い。本来は、宴会開始後、隣席の客と会話をし、料理を堪能した頃を見計らって、長老を中心とした面々が主催者を交えずに「そろそろ「めでた」を出したほうがよいのではないか」と相談する。その中で「めでた」の歌いだし(発声)を行う者が決まる。宴席上座の代表が、主催者側に対して「めでた」を歌いたい旨を伝え、歌いだしを行う者を紹介する。

「めでた」を歌う意味は、宴席を設け招待いただいたことへのお礼と、主催者の弥栄、そして参加者一同の健勝を祈念することにある。したがって主催者が「めでた」の歌いだしを行う者を指名するのではなく、宴席から自然発生するもので、主催者から「めでた」を発声して欲しいなどとは言語道断である。(主催者(司会者)が長老から誰々に歌いだしを依頼したので、紹介して欲しいというのであれば問題はないが)

歌いだしを行う者は、下座に移動し、本席の感謝などを述べ歌い始める。お客は正座して歌いだしに続いて唱和する。

「めでた」が終わると、間髪を入れず主催者側の代表者が「返し」の歌いだしを行い、全員が唱和する。これには、主催者側の「めでた」に対するお礼と、ここからは無礼講に入るものの、まだまだ酒は十分にあるので、ゆっくり歓談して欲しいという意味が込められている。

さらに時間が過ぎると、「めでた」と同様のプロセスを経て、長老の中から「十分楽しんだので、そろそろお開きにしたい」との申し出があり、「納め」の歌いだしが行われ、お客の唱和をもって宴席は終了する。

「めでた」に込められた意味を理解し、いつの日か「めでた」の歌いだしを頼まれて一人前なのだ――と、教えていただきました。

 

『めでた』、『返し』、『納め』の歌詞 ※地域により歌詞・節回しが異なります

 

『めでた』

【歌いだし(独唱)】

めぇーでぇーたぁー めぇーでぇーえぇーたぁーのぉー

【全員唱和】

あーわぁーかぁーまぁーつぅーうぅーさぁーあまぁー あぁーよぉえぇーえだぁーもぉーおぉえさぁーかぁーあぁあよぉーる ぅー うぅうはぁーもぉーおぉぉしゅーげぇーえぇーるぅー

『返し』

【歌いだし(独唱)】

はもぉーしゅげりゃあーこぉーそぉーよー

【全員唱和】

ひぃーとーがぁー あーぁわぁーあかぁーあまぁあーつぅーうーぅーさーまー あぁあとぉーおいぅーえー

『納め』

【歌いだし(独唱)】

おーさーめぇー おーさぁーめぇーはぁー

【全員唱和】

いくてもぉーあれぇどぉー こよーいぃーおぉさぁーあめぇはーよいーおぉさーめー

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